2017/03/21 02:53

懐かしい人に会った。

元町の交差点で

「いよう!オグやん!」

と声をかけて来た人は、十数年前に音楽と暴力を融合したハードコアという裏稼業系の音楽をやっていた先輩だった。僕は挨拶もそこそこに当時のことを思い出していた。


その日、先輩がライブをするというので大阪に向かい、早く着いたのでリハーサルに顔を出しに行った。

先輩はリハを終え、対バンのアメリカから来たハードコアバンドのリハを見ていた。外人のリハが終わると、英語の話せる気の弱そうな人を通訳として従え、太マッチョなボーカルに飲みに行こうと話しかけていた。

アメ村の歩道を、先輩、外人、通訳の後ろを何とはなしに付いて歩いていると、突然先輩が反対側の歩道に向かってダッシュしだした。次の瞬間にはヒップホップ風ルックスの兄ちゃんを念入りにシバいていた。ひとしきりシバいた後、興奮冷めやらぬままこっちへ戻って来た先輩に何があったのか聞くと、

「メンチ切ってきやがったからよう!」

と、未だご立腹の様子。その時、通訳がどう訳したのか分からないが外人は確かにこう言った。


「ホワット イズ メンチ!?」


そのすっとんきょうな響きに爆笑する僕をよそに、通訳はしっかり説明したらしく、

「そりゃ生きてたら目ぐらい合うやろうに」

と、首までタトゥーの入った外人が引いていた。


そんなこともありましたねぇと言うと、そうやっけ?と全く覚えていなかった。お互い頭に白いものが混じりだし、年をとったなぁと思いながらふと先輩の手を見ると、真新しい傷の上に貼られたバンソコウがはがれかけていた。傷の理由は敢えて伏せる。

先輩は別れを告げ、あの頃と同じようにクラクションをBGMに悠然と赤信号を渡って去って行った。

いつまでもヤキが回らない人を見て少し嬉しくなった。