2018/04/23 16:02
夏子は朝から憂鬱だった。
18歳の誕生日に彼氏のタカシとお揃いで入れたタトゥーが昨日の夜に母親に見つかった。いつものように文句が飛んでくると思った瞬間、母は顔を覆って泣き出した。
父と離婚してから母が泣くところなんか見たことがなかった。夏子はとても悪いことをしたような気がして胸が痛くなった。
その日の夕方、いつものように出かける準備を終え部屋を出ると、いつもより少しだけ豪華な食事が用意されていた。
「今日ぐらい家で食べないの…?」
母親にそう言われ、夏子はハッとした。今日は弟の高校入試の合格のお祝いをする日だった。
こんな日でも外食もできないほど切り詰めていることは知っている。でもいつもよりほんの少しだけ豪華な食事を見て夏子はなぜかまた胸が痛くなった。
ケータイが鳴り、タカシから到着の知らせを聞いて夏子は何かを振り切るように家を出た。
いつもように車を走らせ、いつものように食事をし、いつものように酒を飲み、いつものようにセックスをする。いつもの楽しい一日が待っていた。
夏子はタカシがどんな仕事をしているのか詳しくは知らなかったが、あまりよくないことをして稼いでいるのは感じていた。でもデート代は全部出してくれるし、時々プレゼントもくれる。何より自分には優しくしてくれるので深く考えることも詮索もしなかった。
いつものように二人で酒を飲んでいると、とても堅気には見えない風貌の男が話しかけてきた。
「おいタカシ。今月分の上納金がまだなんだけどなぁ」
そしてタカシと男は夏子にはよく分からない会話を交わす。
「じゃあそういうことで」
そう言うとタカシは夏子の方を見ることもなく席を立った。嫌な雰囲気を感じながらもタカシについて行こうとすると、夏子は男に腕を掴まれた。
「お嬢ちゃんは俺と一緒に来るんだよ。お前はタカシに売られたんだ。これからたっぷり稼いでもらうからな」
さすがに自分がバカだと自覚している夏子にも状況がハッキリ分かった。
「いや!帰る!離して!」
そう言った瞬間、男は夏子を思い切り殴った。
恐怖と混乱で体が震えた。
しかし男は夏子のそんな様子を気にすることもなく、泣き叫ぶ夏子を無理やり店から連れ出し車に乗せた。助けてくれる人は誰もいなかった。
何度も殴られて心は折れ、手足を縛られて逃げられなくなった夏子は、不意に昨夜の泣いた母の姿や、用意された今日の夕食を思い出した。
「今日ぐらい家で晩御飯食べればよかったな。お母さんごめんね」
全てを諦めたように夏子はそう思った。
男は車を走らせた。
これから自分はどうなるのか。考えたくもなかったが、嫌な想像が頭の中を回り続け、体の震えが止まらなかった。
ふと窓の外に目をやると、とても初々しく仲睦まじいカップルが手を繋いで歩いていた。
「アタシ、もう二度とあんな世界に戻れないんだろうな」
ていうぐらいにカスタムされたSTが帰ってまいりました!もう元には戻せません!乗りごこち最高!爆音!
